1-7 耐震・免震技術 主要出願人の技術的特徴③

前回は、大和ハウス工業の技術的特徴のうち分類(3)に該当する技術を分析しました。

今回は、その続きの大和ハウス工業の出願で主軸においていると思われる技術分類(4)に該当する技術を見てみたいと思います。

(4)の分類は、移動を許容する支承または類似の支持体の中で、「ころがりによるもの」という分類です。
大和ハウス工業の出願で登録になっている特許は全て、転がる形状を持った物体と皿状の受け部によって構成された免震手段です。

前回と重複しますが、大和ハウス工業は、戸建住宅やマンションの開発、建設、販売、賃貸及びリフォームなどを主な事業としている会社です。
そのため出願されている特許も戸建住宅に適用するための免震技術が多く含まれています。
それでは、転がり免震に関する大和ハウス工業の登録特許を見ていきます。

1-4 耐震・免震技術の技術分析の主要出願人先頭FI出願件数のマップでは、大和ハウス工業が分類(4)を付与している特許は公開、登録合わせて17件あり、そのうち登録特許は5件です。

特許3958070
この発明は、転がり免震装置の施工方法に関するものです。
従来から転がり免震装置では、位置がずれないように上下の皿部同士をプレートで固定しながら建物への設置を行っていました。

このプレートを横方向からネジ止めするために上下皿部にネジ孔を横向きに加工しなければならず、この孔の加工が非常に厄介で、コストが高くつく、さらに、プレートは免震装置設置後に不必要な部材となってしまい処理しなければならないという課題が挙げられています。

この課題を解決するために、本発明では、まず上皿と下皿の形状を異ならせます。

上皿と下皿の間に球状を位置合わせを行い、縦のネジ孔によって螺合して固定します。

一体的に固定されている免震装置の下皿を基礎に固定します。
この時に上皿と下皿の形状を異ならせたことで下皿の固定作業に対して上皿が邪魔になることがなく容易に下皿を固定することができます。

上部建築物の免震装置と螺合する部分には、免震装置の上皿と固定するための縦のネジ穴と、免震装置の上皿と下皿を固定しているネジを抜き取るための孔が予めあります。
免震装置の固定後ネジを抜き取るための孔から免震装置を一体的に固定していたネジを抜き取るようになっています。

ほんのちょっとした改良ですが、作業効率が上がり、無駄な材料が減るという効果が生まれることで、コストの問題がよく取り上げられる免震装置の設置を促進しようとする狙いがあると思います。

特許4073685
この発明も、①の特許のように平面的にコンパクトでコスト削減を効果とする免震装置に関するものです。
詳細は公報PDF参照してください。

特許4159958
この発明は、ゴム弾性体による縦揺れへの対応と転がり免震による横揺れへの対応を備えた免震装置です。
最近も縦揺れの後に横揺れが続くというような地震をよく感じます。
東京で感じる程度のものだけでなく、さらに強いエネルギーを持った地震への対応のための発明です。
詳細は公報PDFを参照してください。

特許4460410
4つめの登録特許は、過去に何度か触れている風揺れ防止機能を備えた免震装置です。
少し面白い風揺れ防止なので簡単に紹介したいと思います。

転がり免震装置の下皿と球体を有する部分はこれまでと同じです。
しかし、上皿に該当する部分が少し異なっています。
上皿に該当する上部構造部は、球体を保持するような形状になっています。
さらに上部構造部には、自重で降下する下皿と接することで風揺れを防止する風揺れ防止機構が設けられています。

この風揺れ防止機構を地震時以外は常に下皿と接した状態にしておき、風による揺れを防止します。
そして、地震が発生するとその横揺れのエネルギーと下皿の傾斜によって風揺れ防止機構が上方へ跳ね上げられます。

風揺れ防止機構が上方へ跳ね上げられた場合は、風揺れ防止機構が上部で保持させる機構があり地震の揺れが収まる程度の時間は下皿と接触しないようになっています。
複雑な制御をすることなく、シンプルな機構で風揺れと免震とを実現する発明です。

特許4472859
さて、最後の登録特許です。
この発明では、転がり免震装置が大きな揺れを受けた場合に球体が皿部から外れてしまわないように皿部と球体とレールを使用して球体が外れるのを規制する機構を設けたものです。
従来からこのような技術はありましたが、ねじれのエネルギーが大きい地震時には、スムーズに作動しないという課題がありました。
その課題を解決するためにスムーズに免震装置を作動させるための改良発明がこの特許です。
詳細は公報PDFを参照してください。

大和ハウス工業の出願が顕著に見られた技術分野に該当する登録特許については以上となります。

大和ハウス工業の分類(3)と(4)にある登録特許から読み取れることは、戸建住宅に転がり免震装置を低コストで設置面積を抑えて普及させるための改良技術が中心です。
従来からある免震技術の課題点である、風揺れやさらに大きな地震に対応できる免震技術、また、複数の免震技術の組合せて安全性を高める開発に注力しています。
(3)(4)ともに共通していることは、免震装置として大和ハウス工業が採用しているのは、「転がり免震」を中心としている点が特徴として確認できたと思います。

昨年の大地震によって新たに免震装置の課題が生まれました。
戸建住宅や中規模マンションは、人が多くの時間を過ごす場所であることは今後も変わらないので、戸建住宅や中規模マンションの免震技術についての改良発明は今後も追っていきたいと思います。

今回はここまでにします。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
また、次回もよろしくお願いします。

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ふらっと有用特許情報

少し暖かくなり始めました。
うれしいことですが、花粉の季節がやってきます。
花粉症の人にとっては、全くうれしくないかもしれません…
花粉の原因の一つが「杉」です。
日本には、北は秋田杉、南は屋久杉と広い範囲に分布しています。
今回は、そんな杉を有効利用する特許を紹介します。

特許3697468
発明の名称:樹皮と網からなる油吸着剤
特許権者:大分県

この技術は、樹皮を使用して海洋などに流出してしまった油を取り除こうとするものです。
タンカーの事故や去年の津波によって重油などが海に流出していました。
この技術は、そのような現場において威力を発揮するようです。

ん?って感じですね。

杉の外樹皮にはリグニンという水をはじいて油となじむ成分が52%ほど含まれていて、樹種の中でもかなり多い含有量だそうです。
さらに、杉は日本各地に多く産地があり、杉の皮は日本全国で年間50万m3も出ていて、焼却処理が難しくなるほどの量です。
つまり、杉の樹皮の処分と海や川の汚染を綺麗にするという一石二鳥の技術と言えます。

ただし、油分を吸着した後に焼却処理をしてしまっては、CO2の排出の減少はすれど、まだ完璧とはいえません。
そこで、油分を含んだ処理についても研究が行われています。
杉樹皮製油吸着材の生分解性の特徴を活かし、土壌微生物に分解させて肥料にしてしまします。
このような処分方法を取ることでCO2の排出量も減少させ、土に返す考え方を取っています。
くわしくは、「杉樹皮製油吸着剤および微生物分解処理技術の実用化について」を読んでみてください。

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1ー6 耐震・免震技術 主要出願人の技術的特徴②

前回はオイレス工業の技術的特徴について書きました。
今回は、大和ハウス工業の技術的特徴について見ていきたいと思います。
大和ハウス工業の出願傾向は、技術分類(1ー4参照)の(3)E04H9/02 331Z及び(4)E04B1/36 Lへの出願が多く見られました。
(3)の分類は、地盤との間に免震支承手段を設けたものの中で、「その他のもの(例浮体用防振水槽、免震柱)」という分類です。
この分類は、免震支承の中でもその他のものと扱われるちょっと変わった免震技術に付与される分類ですので、出願人独特の技術が含まれる可能性があります。
(4)の分類は、移動を許容する支承または類似の支持体の中で、「ころがりによるもの」という分類です。
字のごとく、球状の物体が皿状の受け部を転がるようにして揺れを減衰するような技術(球状と皿状に限定はされませんが。)に付与されます。
大和ハウス工業は、役所広司や黒木メイサが出演していたCMでお馴染みですね。
戸建住宅やマンションの開発、建設、販売、賃貸及びリフォームなどを主な事業としている会社です。
このことから、この分析に含まれる技術としては、戸建住宅や中規模マンションなどの免震技術やリフォームに付随する関連技術が含まれてくると予想されます。
それでは、大和ハウス工業の出願技術は、具体的にどのような技術があるでしょうか?
まずは、分類(3)に含まれる特許から。
この中には5件の登録特許が含まれています。
以上の3件は、免震建物の風揺れ防止機構に関する特許です。
一つの前のブログで、簡単に免震装置の弱点として触れました。
免震技術は、地震の揺れに対して振動を抑制する点では、有効ですが、対策を講じないと風による水平方向の揺れに弱いという弱点があります。
そのために、強風による揺れを抑えるためのなんらかの機構が必要になりました。
このような背景に基づいて開発された技術として上記3件の登録特許があると思われます。
この3件のうち①特許4101622の具体的な技術について見てみます。
風揺れ阻止機構3を備えた免震建物では、図1(ロ-2)及び図2(イ)に示すように、強風Wの時には、摩擦固定作動体6…が筒体4の内周部を把持した風揺れ阻止状態にあって上部構造部2の風揺れが阻止され、図1(ロ-1)及び図2(ロ)に示すように、地震が起こると摩擦固定作動体6…が筒体4の内周部から離間した免震可能状態にあって地震が上部構造部2に伝われのが免れる。(【0015】)
図1
図2
この発明では、上部の建築物と基礎の間に免震手段を持つ建物の上部建築物側か基礎側のどちらかに風揺れ防止機構を設置します
筒体の中を移動可能なロッド、ロッドの先端にブレーキパッドの働きをする固定手段があり、ブレーキパッドの位置を筒体に接するか、接しないかの制御をすることでロッドの移動、固定を制御しています。
ロッドが固定されている状態では、風揺れ防止状態で、ロッドの移動が許容されている状態は、地震の揺れを抑制する免震状態となります。
地震センサーや風速センサーをつけ、ブレーキパッドの状態を制御します。
発明の効果として、低コスト、コンパクトに風揺れ阻止状態と免震可能状態との高い切換え応答性を実現すると記載されています。
つまり、この技術は、戸建住宅の免震装置を設置し、低コストで場所を取らずに風揺れにも対応するというものであると思われます。
この発明は、3次元免震装置(水平方向と上下方向の揺れを抑制する免震技術)の上下方向の動きに対応可能なジョイント部品の構造の簡素化を低コスで行う改良発明に関する特許です。
この発明は、戸建住宅内に駐車スペースがある免震建物に関する特許です。
具体的には、車などの重量の大きいものを家屋内ガレージに入れた状態では、上部建築物の重心位置が変化してしまい、その状態で地震が来た場合に、思い通りの免震効果が現れないという課題に対処する発明です。
単純に上部建築物の重量を大きくすればいいのですが、それではコストがかかり過ぎてしまいます。
また、ガレージを上部建築物の重心位置の近くにすることも考えられますが、設計の自由が奪われてしまいます。
さて、どのようにこの課題を解決するかというと、住宅内に細工を施します。
まず、ガレージには、車を停める場所の下に液体などが入る袋を中に入れた載置台を設置します。
ガレージの位置とは、上部建築物の重心位置を挟んだ反対側に液体など収容できる容器を設置します。
この載置台と容器をホースなどでつないでおきます。
車がない状態の時は、載置台の中の袋に液体が入った状態にし、車がガレージに入ると車の重量によって袋内の液体がホースを伝って容器に移動します。
この液体の重量によって像部建築物の重心の変化を抑えようという発明です。
図2
図4
ちょっとしたアイデアですが、「重量の往きの移動も、戻りの移動も、電気等のコストのかかるエネルギーを使用する必要がなく、ランニングコストを低く抑える」ということまでついてきます。
なかなかおもしろいと思います。
大和ハウス工業の分類(3)に関する登録特許は、以上の5件です。
ここからわかることは、免震手段を持つ戸建住宅についての技術的課題(風の影響や重心)を解決し、それらをコストをかけ過ぎず、設置スペースの問題を加味して開発を行っており、免震手段付きの戸建住宅販売促進を志向していると言えるかと思います。
今回はここまでにします。
次回は、大和ハウス工業の分類(4)の具体的技術内容を分析してみたいと思います。
最後までありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。
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免震装置の弱点とその対策(ちょっと休憩)

今回は少し筆休め的に。

免震技術は、地震には有効ですが、風による水平方向の揺れには弱いとされてきました。

ここで挙げる免震構造の支承部分は、滑ったり転がったりする部材によって上部の建築物を支え、地震時には揺れの伝達を抑制しています。

しかし、強い風が吹くと風の力によって支承部材が動き、建築物が揺れてしまうということが起こっていました。

そこで風による振動を軽減するための部材を開発し、地震による振動か風による振動かによって免震装置の働きを制御する技術があります。

以下のサイトにわかりやすい図が載っているので、添付しておきます。

http://www.miyawaki-c.com/shiyou/menshin/sadou

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1-5 耐震・免震技術 主要出願人の技術的特徴①

前回は、1990年~2009年の間の主要出願人ごとの技術分野を分析しました。

 
今回からは、主要出願人ごとの技術的特徴を特許公報の記載を追うことで具体的に見ていきたいと思います。
主要出願人の技術的特徴の第一回目は、20年間の出願件数が6番目に多いオイレス工業の技術的特徴をつかみたいと思います。
 
前回と重複しますが、オイレス工業の出願傾向は、免震技術に関する出願が多く、耐震に関する出願はほとんどありませんでした。(1-4 耐震・免震技術の技術分析参照)
免震技術に特化して研究開発を行っているようです。
 
オイレス工業は、耐震・免震技術をメインの製品としている会社ではありません。
様々な機器や構造物に使用されるベアリングを主力製品とする会社です。
自動車、工業用車両、産業ロボット、成形機、家電機器、コピー機…さらには、橋やダムまで。
大小様々なベアリングの開発、製造を行っています。
素材としても金属、樹脂など使用用途に合わせて開発しています。
その他の製品としては、ベアリングを使用した金型部品があります。
そして、今回の分析に関連する免震技術及び制震技術に関連する製品の開発、製造を行っています。
 
 
今回の「耐震・免震技術」に関連する技術分類の中で、オイレス工業が目立って出願している分類は「E04B1/36 F」です。
この分類は、「移動を許容する支承」という技術思想の下位概念で「滑りによるもの」という技術分野です。
つまり、建築物と基礎の間に滑りによる免震装置を設置し建築物に揺れが伝わるのを抑制する技術です。
 
百聞は一見に如かずですので、オイレス工業の登録特許の図を見てみます。
 
特許4487498(発明の名称:免震構造体)
 
 
図4が平常時の免震装置です。
この免震装置が建築物と基礎の間に複数設置されます。
摺動体が上部と下部の部材の間に曲面沿って配置されていて、上部と下部の部材の曲面に沿って滑ることができます。

地震などが起こると…

 
このように移動することで免震装置の上部にある建築物へ揺れが伝わるのを抑制するしくみになっています。
 
オイレス工業では、この技術に関連した特許が多く出願されています。
 
いくつかの特許公報の技術内容を抜粋します。
 
 
 
この出願は、半球状部材と呼ばれる摺動体による水平方向の揺れ抑制と空気バネによる垂直方向の揺れ抑制を備えた免震装置に関する技術です。
半球状部材の上側と下側とでは、摩擦特性が異なっています。
上側はよく滑るようにしてあり、下側には特定の摩擦特性を持たせることで振動エネルギーの伝達を抑えるようになっています。
 
 
 
この出願では、積層ゴムからなる支承部を建築物と基礎の間に設置し、建築物側か基礎側のどちらかに支承部を滑らせるための滑り板、もう一方は支承部を固定する固定板を設置します。
つまり、建築物側か基礎側のどちらかの面において支承部を滑らせることで振動エネルギーをの伝達を抑えます。
 
 
この図は、支承部の底面図です。
支承部の底面にも滑るための滑り面が設けられています。
この発明のポイントは、滑り面を底面一面ではなく、分割することにポイントがあるようです。
免震装置の上部にある建築物の大きさ、重量などによって分割滑り面の数を増減させることで、滑り面と滑り板の摩擦係数を設定し、様々な建築物に適応した免震装置を提供することができるというものです。
 
 
①②に特許に関してかなり単純に説明しました。
さらに具体的な内容に興味を持たれた方は、上記の公報番号をクリックしていただければ、公報全部を読むことができます。
 
その他のオイレス工業の出願には、滑り支承に関連する部材の製造方法や支承部が外れないようにするための部材を付加するなどの出願があり、滑り支承を中心とした独特の特許を出願があります。
 
以上のことから、オイレス工業の技術的特徴としては、主要製品であるベアリングの摩擦制御の技術を利用し免震技術に活かし、独特の特許を取得していると言えるかと思います。
 
 
今回はここまでにします。
 
次回は、別の主要出願人の技術的特徴にスポットを当てていきます。
 
最後までありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。
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1ー4 耐震・免震技術の技術分析

前回までは、1990年から2009年までの出願件数による動向を分析しました。

 
今回からは、分析母集団に含まれる技術内容について分析していきます。
この分析によって、分析期間中の注目技術及び出願人ごとの注力技術を把握したいと思います。
 
それではまず、特許公報の最も上位に付与されているFIを出願件数ごとに見ていきます。
FIとは、1件1件の特許ごとに複数付与される日本特許庁独自の技術分類です。
ここでは、複数付与されているFIのうち最も上位に付与されたFIを使用します。
特許公報フロントページのサンプルを参照してください。

それでは、まず1990年から2009年までの期間における出願件数の多い上位30のFIごとの年次の出願件数をグラフ化すると以下のようになります。
 
 
 
次に、主要FIの技術内容を表で表します。
「耐or免」の欄は、分類が付与されている公報の技術内容として耐震技術、免震技術のいずれについての記載があるかを表します。
ただし、必ずどちらかというわけではないので参考程度と考えてください。
 
 
グラフでは、X軸に出願年、Y軸(1~30)にFIを配置しています。
FI(1)E04G23/02 D、(8)E04G23/02 Fや(12)E04G23/02 Eという分類は、20年間で多くの出願がありますが、1995年以降から出願が現れています。
この分類は、既存の建築物に新たな部材を付加して強度を向上させる耐震技術について多く付与されています。
阪神淡路大震災によって建築物の強度を高めたいが、全ての建築物を解体して建て直すわけにはいかず、既存の建築物の強度を上げるニーズの増加によるものと思われます。
 
一方、免震技術では、(3)(9)(10)(13)(20)などのE04H9/02 331が付与されている「免震支承手段を設けた」技術と、(4)(6)(11)(15)(16)(25)(27)(29)などのE04B1/36が付与されている「移動を許容する支承または類似の支持体」を有する技術とが多く見られます。
これらの免震技術は、「ゴムなどの積層体」、「ダンパー」、「球状と受け皿状の支承手段」、「車輪状とレール状の支承手段」などを用いて建築物の揺れを抑制する技術です。
 
以上から、既存の建築物の耐震強化新築や建て直しのための免震技術が20年間において多く出願されていると考えられます。
 
 
次に、主要出願人のFIごとの出願件数をグラフ化します。
 
 
このグラフからは、出願人ごとの得意な技術分野について考察してみたいと思います。
 
まず、20年間で出願件数の多い上位5出願人(清水建設竹中工務店鹿島建設大成建設大林組)は、似たような出願傾向が見られます。
補修などの耐震技術についての出願、及び、積層体(積層ゴム含)による免震技術についての出願が多くみられます。
(3)E04H9/02 331 Zに分類される浮体用防振水槽の技術(http://www.shimz.co.jp/theme/sit/technology_01.html)などもあります。
しかし、それら以外の免震についての出願はあまり見られません。
 
上位5出願人の出願について、目立つ出願分類は、鹿島建設の(17)E04H9/02 311でしょうか。
この分類は、建築物のブレースによる補強で耐震構造に含まれる分野です。
 
出願件数が6番目に多いオイレス工業は、免震構造にかなり偏っています。
ほとんど耐震関連の出願は見られません。
オイレス工業の出願群は、免震構造の中でも「滑りによるもの」という分類に多くの出願があり、具体的技術内容が気になるところです。
 
ブリヂストンは、ゴム関連の免震技術についての出願がメインとなっていると考えられます。
 
その他、気になるところは、大和ハウス工業の(3)(4)、フジクラの(4)、カヤバ工業の(4)(10)、旭化成ホームズの(11)といったところでしょうか。
 
ここに挙げた出願人の具体的な技術については、後ほど触れていくことにします。
 
以上のことから、出願件数の多い上位5出願人(最大手ゼネコン5社)は似通った出願傾向を示している。
その他の出願人は、ある程度それぞれの得意とする技術分野について集中的に出願を行っていると言えるかと思います。
このことから大手5社以外の出願人は、技術的にある程度の住み分けができているように思われます。
 
今回は、ここまでにします。
 
次回からは、実際に特許公報の中を読み、さらに具体的な技術の内容について掘り下げていきたいと思います。
 
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。
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1ー3 耐震・免震技術の出願動向2

今回の話を始める前に。
前回の2010年の出願件数に関してのお詫び。
出願件数12件は少な過ぎると思って調べなおしたところ、やはり少なすぎました…
実際の件数は2009年よりも少し多くなります。
今後の分析については、件数が合わなくなるので、2009年までの出願について分析していきます。

また、前回出願件数動向から「アイデアの枯渇」といいましたが、出願件数と1990年からのことを考えると基本特許の権利も切れ始める頃で、アイデアの枯渇に近づいているというくらいにしておきます。

検索範囲の設定をミスしてしまいました…
すみません。

それでは、気を取り直して進めていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。

前回は、1990年〜2009年(とさせてください…)の間における年次の出願件数を分析しました。
1995年の阪神淡路大震災の後、急激に出願件数が増加し、その後は、徐々に減少傾向が見られました。
2009年には100件台になり、1995年辺りの出願件数と比較するとかなりの減少が見られ、アイデア枯渇が近いように思われます。

今回は、耐震・免震技術に関する出願について、出願件数の多い出願人にスポットを当てて分析を行いたいと思います。

まず初めに、出願件数上位30社の20年間の年次出願件数をグラフ化すると以下のようになります。

清水建設(646件)、竹中工務店(514件)、鹿島建設(376件)、大成建設(317件)、大林組(246件)と続いています。
ゼネコン最大手5社が出願件数では、TOP5に並んでいます。
開発資金も他に比べると潤沢でしょうから当然と言えば当然かもしれません。
TOP5以下は、100件以上出願が5社、その他は100件以下の出願件数です。

次に、主要出願人の年次出願件数を見てみます。

※縦軸:出願人出願件数のグラフ横軸と同一

※横軸:1990~2009

ここでも年次出願件数推移と同様に1995年の阪神淡路大震災以後からの出願が増加しています。
やはり、1995年の地震のインパクトは大きかったのでしょう。

全体的に言えることは、ほとんど出願人が2000年以降に出願件数を減らしていることがわかります。
中でも、フジクラ、バンドー化学、住友ゴム工業、カヤバ工業のように、早い段階で開発を止め、撤退したと思われる出願人もいます。(三井建設と住友建設は2003年に合併しています。)

出願人に分けて年次の出願を追ってみても、出願人ごとに少々違いはあるものの、2009年頃には1995年に始まった開発アイデアは停滞気味です。
2010年以降の出願に関しては、今後も調べ続けて行こうと思います。(やはりどうなるのか気になるので。)

前回と今回で、単純な年次出願件数の推移と出願人ごとの件数推移の視点から見てみました。
ここから20年のスパンの中での耐震・免震の技術の「大きな」流れがある程度つかめたと思います。

次回からは、特許分類を分析することで技術的な内容に踏み込んで行くことにします。

また、次回もよろしくお願いします。
ありがとうございました。

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