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‘特許分析’ カテゴリーのアーカイブ

1-10 耐震・免震技術 主要出願人の技術的特徴⑥

前回は、1回目のカヤバ工業の技術的特徴を分析しました。
今回は、前回とは、分類の異なるカヤバ工業の技術的特徴を分析してみたいと思います。

今回取り上げる分類は、1-4耐震・免震の技術的特徴の分析における分類(10)にスポットを当ててみたいと思います。
分類(10)は、同じような地盤との間に免震支承手段を設けたものの中で、「ころがり支承によるもの」という分類です。

分類(4)も「ころがりによるもの」という分類で基本的な構成としては、類似の技術が含まれてくると思われます。
それでは、具体的な登録特許を見てみることにします。

カヤバ工業の出願のうち分類(10)に含まれる7件中2件が登録特許になっています。

特許3795655(発明の名称:免震装置)

まず、この発明は、発明の属する技術分野として、「建築物、コンピュータ、美術工芸品などを地震災害から保護する免震装置」となっているので、これまでの住居の基礎上に設置される免震構造よりは、小型の免震装置に関わる発明です。

この発明の従来技術としては、コンピュータの台や美術品などをするためのショーケースなどの下部に4つの突設された支承部を設け、支承部の下端にスチールボールが回転自在に保持されています。
この4つの支承部が転動可能にすり鉢状のベースプレートが設けられており、地震時にスチールボールがプレート内で転がることによって地震の振動を減衰するものです。

さらに、ベースプレートとコンピュータの台や美術品などをするためのショーケースの間には、各四辺に沿ってオイルダンパが4本取り付けられており、中央には、電磁作用を受けて上方に突出したり退避したりする係止突起が設けられています。

中央の係止突起は、地震時以外は、コンピュータの台や美術品などをするためのショーケースの係止部に
固定されているが、大きな地震が発生すると、電流を流すことで固定を解除し、スチールボールの転がりによる振動の減衰作用を生み出ます。
そして、オイルダンパによって、地震後にも惰性で揺れ続けるベースプレートを減衰作用によって吸収し、停止させる役割を持っています。

このような従来技術の課題として、地震時に通電によって係止突起の解除を行うが、停電になった場合に通電が行われず解除ができないという課題が挙げられています。
この課題は、補助電源を設けることで容易に解決できますが、それでは、コストがかかってしまいます。
そのため、補助電源を設けることなく地震時の停電状態でも確実に免震装置を動作させるためにこの発明は考案されています。

この課題を解決するために、構成としては、大きく変化はしませんが、まず中央の係止突起はなくなっています。
そして、オイルダンパ部分に従来にはない機能を付加しています。
その内容を簡単に言うと、減衰バルブに弁体を設け、大きな揺れの場合に油圧によって弁体が開くことでオイルダンパが作動するようになっており、小さな揺れの場合には、油圧が高くなく弁体が開かないのでオイルダンパは固定状態が保持されるようになっています。
このようなオイルダンパの構成によって、大きな揺れの場合にのみ通電することなく、免震作用とオイルダンパによる減衰作用を併用し、コンピュータや美術品などの倒壊を防ぐようになっています。

ちょっと去年の原発事故を思い出しました。
原発の場合は通電は必ず必要になってくるので違ってきますが、色々な角度から物事を見つめることの大切がわかりますね。

もう1件の登録特許を見てみます。

特許3867223(発明の名称:免震装置)

この発明は、ころがり免震自体の構成が少し異なっています。
下部のプレートとプレート上を転がることで免震作用を生み出すボールを有している点は同じですが、ボールとボール支持部の間に隙間を有し、その隙間をボールベアリングによってボールの転がりを助けています。
このボールベアリングは従来の場合には、一つ一つの小さな球への負荷が多き過ぎて破損してしまうことがあったが、ボールベアリングの数を増加させたことによって、一つ一つへの負荷を小さくして、破損や変形を防ぐというものです。
詳細に興味がある方は、上記のリンクから公報を読むことができるのでそちらからお願いします。

ここまでで、カヤバ工業の分類(4)(10)に含まれる登録特許4件の技術的内容を見てみました。
そのことから考えられるカヤバ工業の開発方針としては、住宅に限らず、コンピュータや美術品を保護するショーケースなどの免震装置の開発も行っており、主な構成としては、ボール部を有する転がりを利用した免震の開発が中心となっています。
転がり免震そのものの改良も行っていますが、それだけでなく、転がり免震に付随する「オイルダンパ」や「ボールベアリング」などの改良も行っているように転がり免震を中心として、さらに安全性の高さを追求し、振動減衰という視点からだけでなく、停電時への対応などのように角度の異なる視点からの改良も進めています
去年の大震災によって、新たな課題を捉えどのような改良発明を出願しているか、今後も見てみたいと思います。

前回と今回でカヤバ工業の技術的特徴を分析してきました。
次回は、旭化成ホームズの技術的特徴を分析していきます。

最後までありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。

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カテゴリー: 特許, 特許分析

1-9 耐震・免震技術 主要出願人の技術的特徴⑤

長らく更新できず、久しぶりの更新です。

前回までで、オイレス工業、大和ハウス工業、フジクラの技術的特徴を分析してきました。
主要出願人の技術的特徴は、今回を含めて後3回にします。

今回は、カヤバ工業の技術的特徴について分析していきたいと思います。
カヤバ工業は、振動制御やパワー制御技術による油圧機器、自動車やバイクのショックアブソーバー、そして今回の分析の主題である免震用ダンパーなどを主力製品としている企業です。
企業として注力している技術は、振動などの制御ですので、免震技術はカヤバ工業の技術の中心から派生して、製品化につながっていると思われます。

カヤバ工業の出願傾向は、1-4の耐震・免震技術の技術分析のグラフから分類(4)と(10)に集中しています。

まず、分類(4)は、大和ハウス工業やフジクラにおいても取り上げた移動を許容する支承または類似の支持体の中で、「ころがりによるもの」という分類です。
字のごとく、球状の物体が皿状の受け部を転がるようにして揺れを減衰するような技術(球状と皿状に限定はされませんが。)に付与されます。
そして、分類(10)も、同じような地盤との間に免震支承手段を設けたものの中で、「ころがり支承によるもの」という分類です。

カヤバ工業の特徴としては、ダンパーなどの振動制御が技術的に強みと思っていたのですが、ここでは、どちらの分類もころがりに関するものです。
さて、具体的な技術内容はどのようになっているでしょうか?

それでは、分類(4)を筆頭のFIとして出願されている8件の中で登録特許になっている2件の内容を見てみたいと思います。

特許3594403(発明の名称:免震装置)

この発明で挙げられている課題は、「上下の円錐形の受け皿と上下受け皿の間にボールを有する免震装置を基礎と建築物の間の四隅に設置する場合、ボールの半径と上下受け皿の傾斜角度は、各免震装置ごとにボールが外れてしまわないように計算されて設計されているが、複数の免震装置を同一の基礎に設置する場合に制作誤差でボール半径と受け皿の傾斜が異なってしまって、正常に免震動作が得られない。」というものです。
つまり、従来から100%同一形状の免震装置は得られず、複数設置の場合、その誤差によって免震効果が弱まってしまうので、誤差を補う構成を取るようになっています。

この発明の図を見てみます。

まずは、従来の転がり免震装置です。

本発明では、この免震装置にハウジングと呼ばれるボールの転がりを許容しながらボールを密封する部材を設けてあります。

そして、基礎の四隅に設置される各免震装置は、押さえバンドを介して連結棒によって連結されています。

このような構成を取ることで、
隣接するボールハウジングが互いに押えバンドと連結部材によって連結されているために、各ボールハウジング内のボールは、単独で転動せず、各ボールが共に同一方向、同一量だけ転動することとなり、一つの下部円錐面受皿上におけるボールの位置と他の下部円錐面受皿上におけるボールの位置とが相互に異なることがなくなる。
更に、各免震装置のボールが個々に自由移動することがなく、各免震装置ごとのボールと下部円錐面受皿とのずれの程度が等しくなるため、免震動作の異常回避が可能になると共に、地震が止んだ後は、各ボールが正規の元の位置に自動復帰することとなる。
という、効果が生まれています。

特許3719810(発明の名称:ボール支承装置)

この発明の課題は、「免震装置のメンテナンス時に、下部の受け皿を交換する場合、取り外し可能な高さまで上部をジャッキアップするが、従来の場合には、かなりの高さまでジャッキアップしなければならず、作業に手間がかかり、負荷が大きいことから損傷していまうことがあった。」というものです。
このメンテナンス作業を軽減し、損傷させることがないようにするためにこの発明は考案されています。

この発明の免震装置に該当する従来技術は以下の図のようになっていました。

この発明では、従来と異なり、免震装置のボール部分の支持部にライナープレートと呼ばれる部材を設けてあります。
このライナープレートは、下部受け皿部の窪みとストッパリングと呼ばれるボールが受け皿から外れることを防ぐ部材との高さを合計した高さを有しています。

このライナープレートは、さらに、積層ゴムなどの弾性体によって形成すると微振動の吸収効果もあります。
下部の受け皿の交換作業を行う場合には、このライナープレート抜き取ることでジャッキアップを少し行えば交換作業が行えるようになるという効果が生まれています。

カヤバ工業の分類(4)に該当する登録特許の内容をまとめると、ころがり免震装置について少しだけ部材を追加することで、安全性を高めたり、交換作業を軽減するという考え方を持っています。
これらの出願は、1996年と1997年に行われており、阪神淡路大震災のあと浮き上がった「安全性の確保」や「メンテナンス容易性」といった課題に対応していると考えられます。

今回は、ここまでにします。
次回は、カヤバ工業の技術的特徴として分類(10)に該当する登録特許を見てみたいと思います。

最後までありがとうございました。
もう少し更新頻度を上げれるように頑張ります。
次回もよろしくお願いします。

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カテゴリー: 特許, 特許分析

1-8 耐震・免震技術 主要出願人の技術的特徴④

前回までで、主要出願人の中で、オイレス工業、大和ハウス工業の技術的特徴を分析しました。

今回は、主要出願人中で20番目の出願件数であるフジクラの技術的特徴を見てみます。

フジクラは、通信関連のケーブルや機器、電子部品を主に扱う会社です。
1-3の主要出願人の年次出願件数を参照していただければわかりますが、耐震・免震技術からは撤退していると考えられます。
ですので、現在の製品情報にはすでに耐震・免震に関する製品はありませんが、当時の技術的特徴を見てみることでどのように耐震・免震の技術分野で製品を出そうとしたのかを見てみたいと思います。

フジクラの出願傾向は、1-4の耐震・免震技術の技術分析のグラフから分類(4)へ出願が集中しています。
分類(4)は、大和ハウス工業やカヤバ工業の出願も多くある分類で、免震技術における「ころがりによるもの」という分類です。
この分類が付加されるポピュラーな構成は、皿状の受け部と球状の物体によって構成され、球状の物体が転がることによって建物への振動を減衰する技術です。

この構成の技術についての改良発明が1995年の阪神淡路大震災以降に多く出願されています。

さて、フジクラの特許を見ていこうと思いますが、この分類に対して、主要出願人としてピックアップした30社の中では最も多い19件の特許を出願していますが、分類(4)が付与されているフジクラの出願は一件も登録になっていません。
つまり、フジクラの権利となった特許出願はなかったということです。

さらに、その内訳は大きく分けると3つのポイントに分かれています。

(1)転がり免震における部品削減によるコストセービング
(2)紐状の弾性体と転がり免震を併用し振動を減衰させる
(3)組立て可能な構成にすることで取り扱い、設置工事を容易にする

これらの中から(2)の紐状の弾性体を転がり免震に併用する技術を見てみます。

特開平09-242381

この発明の課題は、ゴムなどの弾性体と鋼板などの積層体のみで強度を高めようとして積層体を太くすると免震周期が短くなり、免震特性が低下してうこと、従来のバネ、ダンパ、転がり免震の三種類の免震装置を組み合わせた免震構造体では、構成が複雑巣すぎること、及び、耐風機能を備えた免震構造体の必要性が挙げられています。

それらの課題を解決するために、この発明では、単純な構成で安価で免震と耐風機能に優れた免震装置を出願しています。

構成は非常に単純で、転がり免震装置の周りを紐状の弾性体によって囲んだ状態です。
地震時には以下のような動きをします。

変位限定手段(チェーンなどにゴムなどの被覆材を被覆したもの)によって転がり免震が皿状の受け皿から外れることを予防しています。

もう1件紐状弾性体と転がり免震の併用をした出願がありますが、特に進歩性があるものではありませんでした。

フジクラは免震装置、特に転がり免震装置の改良発明によって耐震・免震技術分野に進出を考えましたが、転がり免震の分野では、有効な発明を世に出すことがなく撤退してしまったようです。
このように、出願件数の量だけを見るとシェアがあったように思われますが、実際の技術内容を紐解いてみると有効な特許を生み出すことなく撤退していった状況がわかります。
今回の分析から、数値による特許情報のみからでは、正確な判断は難しいということがわかるかと思います。

ちょっと拍子抜けな感じもしますが、今回はここまでにします。

最後までありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。

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1-7 耐震・免震技術 主要出願人の技術的特徴③

前回は、大和ハウス工業の技術的特徴のうち分類(3)に該当する技術を分析しました。

今回は、その続きの大和ハウス工業の出願で主軸においていると思われる技術分類(4)に該当する技術を見てみたいと思います。

(4)の分類は、移動を許容する支承または類似の支持体の中で、「ころがりによるもの」という分類です。
大和ハウス工業の出願で登録になっている特許は全て、転がる形状を持った物体と皿状の受け部によって構成された免震手段です。

前回と重複しますが、大和ハウス工業は、戸建住宅やマンションの開発、建設、販売、賃貸及びリフォームなどを主な事業としている会社です。
そのため出願されている特許も戸建住宅に適用するための免震技術が多く含まれています。
それでは、転がり免震に関する大和ハウス工業の登録特許を見ていきます。

1-4 耐震・免震技術の技術分析の主要出願人先頭FI出願件数のマップでは、大和ハウス工業が分類(4)を付与している特許は公開、登録合わせて17件あり、そのうち登録特許は5件です。

特許3958070
この発明は、転がり免震装置の施工方法に関するものです。
従来から転がり免震装置では、位置がずれないように上下の皿部同士をプレートで固定しながら建物への設置を行っていました。

このプレートを横方向からネジ止めするために上下皿部にネジ孔を横向きに加工しなければならず、この孔の加工が非常に厄介で、コストが高くつく、さらに、プレートは免震装置設置後に不必要な部材となってしまい処理しなければならないという課題が挙げられています。

この課題を解決するために、本発明では、まず上皿と下皿の形状を異ならせます。

上皿と下皿の間に球状を位置合わせを行い、縦のネジ孔によって螺合して固定します。

一体的に固定されている免震装置の下皿を基礎に固定します。
この時に上皿と下皿の形状を異ならせたことで下皿の固定作業に対して上皿が邪魔になることがなく容易に下皿を固定することができます。

上部建築物の免震装置と螺合する部分には、免震装置の上皿と固定するための縦のネジ穴と、免震装置の上皿と下皿を固定しているネジを抜き取るための孔が予めあります。
免震装置の固定後ネジを抜き取るための孔から免震装置を一体的に固定していたネジを抜き取るようになっています。

ほんのちょっとした改良ですが、作業効率が上がり、無駄な材料が減るという効果が生まれることで、コストの問題がよく取り上げられる免震装置の設置を促進しようとする狙いがあると思います。

特許4073685
この発明も、①の特許のように平面的にコンパクトでコスト削減を効果とする免震装置に関するものです。
詳細は公報PDF参照してください。

特許4159958
この発明は、ゴム弾性体による縦揺れへの対応と転がり免震による横揺れへの対応を備えた免震装置です。
最近も縦揺れの後に横揺れが続くというような地震をよく感じます。
東京で感じる程度のものだけでなく、さらに強いエネルギーを持った地震への対応のための発明です。
詳細は公報PDFを参照してください。

特許4460410
4つめの登録特許は、過去に何度か触れている風揺れ防止機能を備えた免震装置です。
少し面白い風揺れ防止なので簡単に紹介したいと思います。

転がり免震装置の下皿と球体を有する部分はこれまでと同じです。
しかし、上皿に該当する部分が少し異なっています。
上皿に該当する上部構造部は、球体を保持するような形状になっています。
さらに上部構造部には、自重で降下する下皿と接することで風揺れを防止する風揺れ防止機構が設けられています。

この風揺れ防止機構を地震時以外は常に下皿と接した状態にしておき、風による揺れを防止します。
そして、地震が発生するとその横揺れのエネルギーと下皿の傾斜によって風揺れ防止機構が上方へ跳ね上げられます。

風揺れ防止機構が上方へ跳ね上げられた場合は、風揺れ防止機構が上部で保持させる機構があり地震の揺れが収まる程度の時間は下皿と接触しないようになっています。
複雑な制御をすることなく、シンプルな機構で風揺れと免震とを実現する発明です。

特許4472859
さて、最後の登録特許です。
この発明では、転がり免震装置が大きな揺れを受けた場合に球体が皿部から外れてしまわないように皿部と球体とレールを使用して球体が外れるのを規制する機構を設けたものです。
従来からこのような技術はありましたが、ねじれのエネルギーが大きい地震時には、スムーズに作動しないという課題がありました。
その課題を解決するためにスムーズに免震装置を作動させるための改良発明がこの特許です。
詳細は公報PDFを参照してください。

大和ハウス工業の出願が顕著に見られた技術分野に該当する登録特許については以上となります。

大和ハウス工業の分類(3)と(4)にある登録特許から読み取れることは、戸建住宅に転がり免震装置を低コストで設置面積を抑えて普及させるための改良技術が中心です。
従来からある免震技術の課題点である、風揺れやさらに大きな地震に対応できる免震技術、また、複数の免震技術の組合せて安全性を高める開発に注力しています。
(3)(4)ともに共通していることは、免震装置として大和ハウス工業が採用しているのは、「転がり免震」を中心としている点が特徴として確認できたと思います。

昨年の大地震によって新たに免震装置の課題が生まれました。
戸建住宅や中規模マンションは、人が多くの時間を過ごす場所であることは今後も変わらないので、戸建住宅や中規模マンションの免震技術についての改良発明は今後も追っていきたいと思います。

今回はここまでにします。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
また、次回もよろしくお願いします。

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1ー6 耐震・免震技術 主要出願人の技術的特徴②

前回はオイレス工業の技術的特徴について書きました。
今回は、大和ハウス工業の技術的特徴について見ていきたいと思います。
大和ハウス工業の出願傾向は、技術分類(1ー4参照)の(3)E04H9/02 331Z及び(4)E04B1/36 Lへの出願が多く見られました。
(3)の分類は、地盤との間に免震支承手段を設けたものの中で、「その他のもの(例浮体用防振水槽、免震柱)」という分類です。
この分類は、免震支承の中でもその他のものと扱われるちょっと変わった免震技術に付与される分類ですので、出願人独特の技術が含まれる可能性があります。
(4)の分類は、移動を許容する支承または類似の支持体の中で、「ころがりによるもの」という分類です。
字のごとく、球状の物体が皿状の受け部を転がるようにして揺れを減衰するような技術(球状と皿状に限定はされませんが。)に付与されます。
大和ハウス工業は、役所広司や黒木メイサが出演していたCMでお馴染みですね。
戸建住宅やマンションの開発、建設、販売、賃貸及びリフォームなどを主な事業としている会社です。
このことから、この分析に含まれる技術としては、戸建住宅や中規模マンションなどの免震技術やリフォームに付随する関連技術が含まれてくると予想されます。
それでは、大和ハウス工業の出願技術は、具体的にどのような技術があるでしょうか?
まずは、分類(3)に含まれる特許から。
この中には5件の登録特許が含まれています。
以上の3件は、免震建物の風揺れ防止機構に関する特許です。
一つの前のブログで、簡単に免震装置の弱点として触れました。
免震技術は、地震の揺れに対して振動を抑制する点では、有効ですが、対策を講じないと風による水平方向の揺れに弱いという弱点があります。
そのために、強風による揺れを抑えるためのなんらかの機構が必要になりました。
このような背景に基づいて開発された技術として上記3件の登録特許があると思われます。
この3件のうち①特許4101622の具体的な技術について見てみます。
風揺れ阻止機構3を備えた免震建物では、図1(ロ-2)及び図2(イ)に示すように、強風Wの時には、摩擦固定作動体6…が筒体4の内周部を把持した風揺れ阻止状態にあって上部構造部2の風揺れが阻止され、図1(ロ-1)及び図2(ロ)に示すように、地震が起こると摩擦固定作動体6…が筒体4の内周部から離間した免震可能状態にあって地震が上部構造部2に伝われのが免れる。(【0015】)
図1
図2
この発明では、上部の建築物と基礎の間に免震手段を持つ建物の上部建築物側か基礎側のどちらかに風揺れ防止機構を設置します
筒体の中を移動可能なロッド、ロッドの先端にブレーキパッドの働きをする固定手段があり、ブレーキパッドの位置を筒体に接するか、接しないかの制御をすることでロッドの移動、固定を制御しています。
ロッドが固定されている状態では、風揺れ防止状態で、ロッドの移動が許容されている状態は、地震の揺れを抑制する免震状態となります。
地震センサーや風速センサーをつけ、ブレーキパッドの状態を制御します。
発明の効果として、低コスト、コンパクトに風揺れ阻止状態と免震可能状態との高い切換え応答性を実現すると記載されています。
つまり、この技術は、戸建住宅の免震装置を設置し、低コストで場所を取らずに風揺れにも対応するというものであると思われます。
この発明は、3次元免震装置(水平方向と上下方向の揺れを抑制する免震技術)の上下方向の動きに対応可能なジョイント部品の構造の簡素化を低コスで行う改良発明に関する特許です。
この発明は、戸建住宅内に駐車スペースがある免震建物に関する特許です。
具体的には、車などの重量の大きいものを家屋内ガレージに入れた状態では、上部建築物の重心位置が変化してしまい、その状態で地震が来た場合に、思い通りの免震効果が現れないという課題に対処する発明です。
単純に上部建築物の重量を大きくすればいいのですが、それではコストがかかり過ぎてしまいます。
また、ガレージを上部建築物の重心位置の近くにすることも考えられますが、設計の自由が奪われてしまいます。
さて、どのようにこの課題を解決するかというと、住宅内に細工を施します。
まず、ガレージには、車を停める場所の下に液体などが入る袋を中に入れた載置台を設置します。
ガレージの位置とは、上部建築物の重心位置を挟んだ反対側に液体など収容できる容器を設置します。
この載置台と容器をホースなどでつないでおきます。
車がない状態の時は、載置台の中の袋に液体が入った状態にし、車がガレージに入ると車の重量によって袋内の液体がホースを伝って容器に移動します。
この液体の重量によって像部建築物の重心の変化を抑えようという発明です。
図2
図4
ちょっとしたアイデアですが、「重量の往きの移動も、戻りの移動も、電気等のコストのかかるエネルギーを使用する必要がなく、ランニングコストを低く抑える」ということまでついてきます。
なかなかおもしろいと思います。
大和ハウス工業の分類(3)に関する登録特許は、以上の5件です。
ここからわかることは、免震手段を持つ戸建住宅についての技術的課題(風の影響や重心)を解決し、それらをコストをかけ過ぎず、設置スペースの問題を加味して開発を行っており、免震手段付きの戸建住宅販売促進を志向していると言えるかと思います。
今回はここまでにします。
次回は、大和ハウス工業の分類(4)の具体的技術内容を分析してみたいと思います。
最後までありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。
カテゴリー: 特許, 特許分析

1-5 耐震・免震技術 主要出願人の技術的特徴①

前回は、1990年~2009年の間の主要出願人ごとの技術分野を分析しました。

 
今回からは、主要出願人ごとの技術的特徴を特許公報の記載を追うことで具体的に見ていきたいと思います。
主要出願人の技術的特徴の第一回目は、20年間の出願件数が6番目に多いオイレス工業の技術的特徴をつかみたいと思います。
 
前回と重複しますが、オイレス工業の出願傾向は、免震技術に関する出願が多く、耐震に関する出願はほとんどありませんでした。(1-4 耐震・免震技術の技術分析参照)
免震技術に特化して研究開発を行っているようです。
 
オイレス工業は、耐震・免震技術をメインの製品としている会社ではありません。
様々な機器や構造物に使用されるベアリングを主力製品とする会社です。
自動車、工業用車両、産業ロボット、成形機、家電機器、コピー機…さらには、橋やダムまで。
大小様々なベアリングの開発、製造を行っています。
素材としても金属、樹脂など使用用途に合わせて開発しています。
その他の製品としては、ベアリングを使用した金型部品があります。
そして、今回の分析に関連する免震技術及び制震技術に関連する製品の開発、製造を行っています。
 
 
今回の「耐震・免震技術」に関連する技術分類の中で、オイレス工業が目立って出願している分類は「E04B1/36 F」です。
この分類は、「移動を許容する支承」という技術思想の下位概念で「滑りによるもの」という技術分野です。
つまり、建築物と基礎の間に滑りによる免震装置を設置し建築物に揺れが伝わるのを抑制する技術です。
 
百聞は一見に如かずですので、オイレス工業の登録特許の図を見てみます。
 
特許4487498(発明の名称:免震構造体)
 
 
図4が平常時の免震装置です。
この免震装置が建築物と基礎の間に複数設置されます。
摺動体が上部と下部の部材の間に曲面沿って配置されていて、上部と下部の部材の曲面に沿って滑ることができます。

地震などが起こると…

 
このように移動することで免震装置の上部にある建築物へ揺れが伝わるのを抑制するしくみになっています。
 
オイレス工業では、この技術に関連した特許が多く出願されています。
 
いくつかの特許公報の技術内容を抜粋します。
 
 
 
この出願は、半球状部材と呼ばれる摺動体による水平方向の揺れ抑制と空気バネによる垂直方向の揺れ抑制を備えた免震装置に関する技術です。
半球状部材の上側と下側とでは、摩擦特性が異なっています。
上側はよく滑るようにしてあり、下側には特定の摩擦特性を持たせることで振動エネルギーの伝達を抑えるようになっています。
 
 
 
この出願では、積層ゴムからなる支承部を建築物と基礎の間に設置し、建築物側か基礎側のどちらかに支承部を滑らせるための滑り板、もう一方は支承部を固定する固定板を設置します。
つまり、建築物側か基礎側のどちらかの面において支承部を滑らせることで振動エネルギーをの伝達を抑えます。
 
 
この図は、支承部の底面図です。
支承部の底面にも滑るための滑り面が設けられています。
この発明のポイントは、滑り面を底面一面ではなく、分割することにポイントがあるようです。
免震装置の上部にある建築物の大きさ、重量などによって分割滑り面の数を増減させることで、滑り面と滑り板の摩擦係数を設定し、様々な建築物に適応した免震装置を提供することができるというものです。
 
 
①②に特許に関してかなり単純に説明しました。
さらに具体的な内容に興味を持たれた方は、上記の公報番号をクリックしていただければ、公報全部を読むことができます。
 
その他のオイレス工業の出願には、滑り支承に関連する部材の製造方法や支承部が外れないようにするための部材を付加するなどの出願があり、滑り支承を中心とした独特の特許を出願があります。
 
以上のことから、オイレス工業の技術的特徴としては、主要製品であるベアリングの摩擦制御の技術を利用し免震技術に活かし、独特の特許を取得していると言えるかと思います。
 
 
今回はここまでにします。
 
次回は、別の主要出願人の技術的特徴にスポットを当てていきます。
 
最後までありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。
カテゴリー: 特許, 特許分析

1ー4 耐震・免震技術の技術分析

前回までは、1990年から2009年までの出願件数による動向を分析しました。

 
今回からは、分析母集団に含まれる技術内容について分析していきます。
この分析によって、分析期間中の注目技術及び出願人ごとの注力技術を把握したいと思います。
 
それではまず、特許公報の最も上位に付与されているFIを出願件数ごとに見ていきます。
FIとは、1件1件の特許ごとに複数付与される日本特許庁独自の技術分類です。
ここでは、複数付与されているFIのうち最も上位に付与されたFIを使用します。
特許公報フロントページのサンプルを参照してください。

それでは、まず1990年から2009年までの期間における出願件数の多い上位30のFIごとの年次の出願件数をグラフ化すると以下のようになります。
 
 
 
次に、主要FIの技術内容を表で表します。
「耐or免」の欄は、分類が付与されている公報の技術内容として耐震技術、免震技術のいずれについての記載があるかを表します。
ただし、必ずどちらかというわけではないので参考程度と考えてください。
 
 
グラフでは、X軸に出願年、Y軸(1~30)にFIを配置しています。
FI(1)E04G23/02 D、(8)E04G23/02 Fや(12)E04G23/02 Eという分類は、20年間で多くの出願がありますが、1995年以降から出願が現れています。
この分類は、既存の建築物に新たな部材を付加して強度を向上させる耐震技術について多く付与されています。
阪神淡路大震災によって建築物の強度を高めたいが、全ての建築物を解体して建て直すわけにはいかず、既存の建築物の強度を上げるニーズの増加によるものと思われます。
 
一方、免震技術では、(3)(9)(10)(13)(20)などのE04H9/02 331が付与されている「免震支承手段を設けた」技術と、(4)(6)(11)(15)(16)(25)(27)(29)などのE04B1/36が付与されている「移動を許容する支承または類似の支持体」を有する技術とが多く見られます。
これらの免震技術は、「ゴムなどの積層体」、「ダンパー」、「球状と受け皿状の支承手段」、「車輪状とレール状の支承手段」などを用いて建築物の揺れを抑制する技術です。
 
以上から、既存の建築物の耐震強化新築や建て直しのための免震技術が20年間において多く出願されていると考えられます。
 
 
次に、主要出願人のFIごとの出願件数をグラフ化します。
 
 
このグラフからは、出願人ごとの得意な技術分野について考察してみたいと思います。
 
まず、20年間で出願件数の多い上位5出願人(清水建設竹中工務店鹿島建設大成建設大林組)は、似たような出願傾向が見られます。
補修などの耐震技術についての出願、及び、積層体(積層ゴム含)による免震技術についての出願が多くみられます。
(3)E04H9/02 331 Zに分類される浮体用防振水槽の技術(http://www.shimz.co.jp/theme/sit/technology_01.html)などもあります。
しかし、それら以外の免震についての出願はあまり見られません。
 
上位5出願人の出願について、目立つ出願分類は、鹿島建設の(17)E04H9/02 311でしょうか。
この分類は、建築物のブレースによる補強で耐震構造に含まれる分野です。
 
出願件数が6番目に多いオイレス工業は、免震構造にかなり偏っています。
ほとんど耐震関連の出願は見られません。
オイレス工業の出願群は、免震構造の中でも「滑りによるもの」という分類に多くの出願があり、具体的技術内容が気になるところです。
 
ブリヂストンは、ゴム関連の免震技術についての出願がメインとなっていると考えられます。
 
その他、気になるところは、大和ハウス工業の(3)(4)、フジクラの(4)、カヤバ工業の(4)(10)、旭化成ホームズの(11)といったところでしょうか。
 
ここに挙げた出願人の具体的な技術については、後ほど触れていくことにします。
 
以上のことから、出願件数の多い上位5出願人(最大手ゼネコン5社)は似通った出願傾向を示している。
その他の出願人は、ある程度それぞれの得意とする技術分野について集中的に出願を行っていると言えるかと思います。
このことから大手5社以外の出願人は、技術的にある程度の住み分けができているように思われます。
 
今回は、ここまでにします。
 
次回からは、実際に特許公報の中を読み、さらに具体的な技術の内容について掘り下げていきたいと思います。
 
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。
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