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1-9 耐震・免震技術 主要出願人の技術的特徴⑤

長らく更新できず、久しぶりの更新です。

前回までで、オイレス工業、大和ハウス工業、フジクラの技術的特徴を分析してきました。
主要出願人の技術的特徴は、今回を含めて後3回にします。

今回は、カヤバ工業の技術的特徴について分析していきたいと思います。
カヤバ工業は、振動制御やパワー制御技術による油圧機器、自動車やバイクのショックアブソーバー、そして今回の分析の主題である免震用ダンパーなどを主力製品としている企業です。
企業として注力している技術は、振動などの制御ですので、免震技術はカヤバ工業の技術の中心から派生して、製品化につながっていると思われます。

カヤバ工業の出願傾向は、1-4の耐震・免震技術の技術分析のグラフから分類(4)と(10)に集中しています。

まず、分類(4)は、大和ハウス工業やフジクラにおいても取り上げた移動を許容する支承または類似の支持体の中で、「ころがりによるもの」という分類です。
字のごとく、球状の物体が皿状の受け部を転がるようにして揺れを減衰するような技術(球状と皿状に限定はされませんが。)に付与されます。
そして、分類(10)も、同じような地盤との間に免震支承手段を設けたものの中で、「ころがり支承によるもの」という分類です。

カヤバ工業の特徴としては、ダンパーなどの振動制御が技術的に強みと思っていたのですが、ここでは、どちらの分類もころがりに関するものです。
さて、具体的な技術内容はどのようになっているでしょうか?

それでは、分類(4)を筆頭のFIとして出願されている8件の中で登録特許になっている2件の内容を見てみたいと思います。

特許3594403(発明の名称:免震装置)

この発明で挙げられている課題は、「上下の円錐形の受け皿と上下受け皿の間にボールを有する免震装置を基礎と建築物の間の四隅に設置する場合、ボールの半径と上下受け皿の傾斜角度は、各免震装置ごとにボールが外れてしまわないように計算されて設計されているが、複数の免震装置を同一の基礎に設置する場合に制作誤差でボール半径と受け皿の傾斜が異なってしまって、正常に免震動作が得られない。」というものです。
つまり、従来から100%同一形状の免震装置は得られず、複数設置の場合、その誤差によって免震効果が弱まってしまうので、誤差を補う構成を取るようになっています。

この発明の図を見てみます。

まずは、従来の転がり免震装置です。

本発明では、この免震装置にハウジングと呼ばれるボールの転がりを許容しながらボールを密封する部材を設けてあります。

そして、基礎の四隅に設置される各免震装置は、押さえバンドを介して連結棒によって連結されています。

このような構成を取ることで、
隣接するボールハウジングが互いに押えバンドと連結部材によって連結されているために、各ボールハウジング内のボールは、単独で転動せず、各ボールが共に同一方向、同一量だけ転動することとなり、一つの下部円錐面受皿上におけるボールの位置と他の下部円錐面受皿上におけるボールの位置とが相互に異なることがなくなる。
更に、各免震装置のボールが個々に自由移動することがなく、各免震装置ごとのボールと下部円錐面受皿とのずれの程度が等しくなるため、免震動作の異常回避が可能になると共に、地震が止んだ後は、各ボールが正規の元の位置に自動復帰することとなる。
という、効果が生まれています。

特許3719810(発明の名称:ボール支承装置)

この発明の課題は、「免震装置のメンテナンス時に、下部の受け皿を交換する場合、取り外し可能な高さまで上部をジャッキアップするが、従来の場合には、かなりの高さまでジャッキアップしなければならず、作業に手間がかかり、負荷が大きいことから損傷していまうことがあった。」というものです。
このメンテナンス作業を軽減し、損傷させることがないようにするためにこの発明は考案されています。

この発明の免震装置に該当する従来技術は以下の図のようになっていました。

この発明では、従来と異なり、免震装置のボール部分の支持部にライナープレートと呼ばれる部材を設けてあります。
このライナープレートは、下部受け皿部の窪みとストッパリングと呼ばれるボールが受け皿から外れることを防ぐ部材との高さを合計した高さを有しています。

このライナープレートは、さらに、積層ゴムなどの弾性体によって形成すると微振動の吸収効果もあります。
下部の受け皿の交換作業を行う場合には、このライナープレート抜き取ることでジャッキアップを少し行えば交換作業が行えるようになるという効果が生まれています。

カヤバ工業の分類(4)に該当する登録特許の内容をまとめると、ころがり免震装置について少しだけ部材を追加することで、安全性を高めたり、交換作業を軽減するという考え方を持っています。
これらの出願は、1996年と1997年に行われており、阪神淡路大震災のあと浮き上がった「安全性の確保」や「メンテナンス容易性」といった課題に対応していると考えられます。

今回は、ここまでにします。
次回は、カヤバ工業の技術的特徴として分類(10)に該当する登録特許を見てみたいと思います。

最後までありがとうございました。
もう少し更新頻度を上げれるように頑張ります。
次回もよろしくお願いします。

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カテゴリー: 特許, 特許分析
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