アーカイブ

2012 年 3 月 のアーカイブ

1-10 耐震・免震技術 主要出願人の技術的特徴⑥

前回は、1回目のカヤバ工業の技術的特徴を分析しました。
今回は、前回とは、分類の異なるカヤバ工業の技術的特徴を分析してみたいと思います。

今回取り上げる分類は、1-4耐震・免震の技術的特徴の分析における分類(10)にスポットを当ててみたいと思います。
分類(10)は、同じような地盤との間に免震支承手段を設けたものの中で、「ころがり支承によるもの」という分類です。

分類(4)も「ころがりによるもの」という分類で基本的な構成としては、類似の技術が含まれてくると思われます。
それでは、具体的な登録特許を見てみることにします。

カヤバ工業の出願のうち分類(10)に含まれる7件中2件が登録特許になっています。

特許3795655(発明の名称:免震装置)

まず、この発明は、発明の属する技術分野として、「建築物、コンピュータ、美術工芸品などを地震災害から保護する免震装置」となっているので、これまでの住居の基礎上に設置される免震構造よりは、小型の免震装置に関わる発明です。

この発明の従来技術としては、コンピュータの台や美術品などをするためのショーケースなどの下部に4つの突設された支承部を設け、支承部の下端にスチールボールが回転自在に保持されています。
この4つの支承部が転動可能にすり鉢状のベースプレートが設けられており、地震時にスチールボールがプレート内で転がることによって地震の振動を減衰するものです。

さらに、ベースプレートとコンピュータの台や美術品などをするためのショーケースの間には、各四辺に沿ってオイルダンパが4本取り付けられており、中央には、電磁作用を受けて上方に突出したり退避したりする係止突起が設けられています。

中央の係止突起は、地震時以外は、コンピュータの台や美術品などをするためのショーケースの係止部に
固定されているが、大きな地震が発生すると、電流を流すことで固定を解除し、スチールボールの転がりによる振動の減衰作用を生み出ます。
そして、オイルダンパによって、地震後にも惰性で揺れ続けるベースプレートを減衰作用によって吸収し、停止させる役割を持っています。

このような従来技術の課題として、地震時に通電によって係止突起の解除を行うが、停電になった場合に通電が行われず解除ができないという課題が挙げられています。
この課題は、補助電源を設けることで容易に解決できますが、それでは、コストがかかってしまいます。
そのため、補助電源を設けることなく地震時の停電状態でも確実に免震装置を動作させるためにこの発明は考案されています。

この課題を解決するために、構成としては、大きく変化はしませんが、まず中央の係止突起はなくなっています。
そして、オイルダンパ部分に従来にはない機能を付加しています。
その内容を簡単に言うと、減衰バルブに弁体を設け、大きな揺れの場合に油圧によって弁体が開くことでオイルダンパが作動するようになっており、小さな揺れの場合には、油圧が高くなく弁体が開かないのでオイルダンパは固定状態が保持されるようになっています。
このようなオイルダンパの構成によって、大きな揺れの場合にのみ通電することなく、免震作用とオイルダンパによる減衰作用を併用し、コンピュータや美術品などの倒壊を防ぐようになっています。

ちょっと去年の原発事故を思い出しました。
原発の場合は通電は必ず必要になってくるので違ってきますが、色々な角度から物事を見つめることの大切がわかりますね。

もう1件の登録特許を見てみます。

特許3867223(発明の名称:免震装置)

この発明は、ころがり免震自体の構成が少し異なっています。
下部のプレートとプレート上を転がることで免震作用を生み出すボールを有している点は同じですが、ボールとボール支持部の間に隙間を有し、その隙間をボールベアリングによってボールの転がりを助けています。
このボールベアリングは従来の場合には、一つ一つの小さな球への負荷が多き過ぎて破損してしまうことがあったが、ボールベアリングの数を増加させたことによって、一つ一つへの負荷を小さくして、破損や変形を防ぐというものです。
詳細に興味がある方は、上記のリンクから公報を読むことができるのでそちらからお願いします。

ここまでで、カヤバ工業の分類(4)(10)に含まれる登録特許4件の技術的内容を見てみました。
そのことから考えられるカヤバ工業の開発方針としては、住宅に限らず、コンピュータや美術品を保護するショーケースなどの免震装置の開発も行っており、主な構成としては、ボール部を有する転がりを利用した免震の開発が中心となっています。
転がり免震そのものの改良も行っていますが、それだけでなく、転がり免震に付随する「オイルダンパ」や「ボールベアリング」などの改良も行っているように転がり免震を中心として、さらに安全性の高さを追求し、振動減衰という視点からだけでなく、停電時への対応などのように角度の異なる視点からの改良も進めています
去年の大震災によって、新たな課題を捉えどのような改良発明を出願しているか、今後も見てみたいと思います。

前回と今回でカヤバ工業の技術的特徴を分析してきました。
次回は、旭化成ホームズの技術的特徴を分析していきます。

最後までありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。

にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ
にほんブログ村

ぽちっとお願いします。
その他、知財関連のブログを探すことも可能です。

カテゴリー: 特許, 特許分析

1-9 耐震・免震技術 主要出願人の技術的特徴⑤

長らく更新できず、久しぶりの更新です。

前回までで、オイレス工業、大和ハウス工業、フジクラの技術的特徴を分析してきました。
主要出願人の技術的特徴は、今回を含めて後3回にします。

今回は、カヤバ工業の技術的特徴について分析していきたいと思います。
カヤバ工業は、振動制御やパワー制御技術による油圧機器、自動車やバイクのショックアブソーバー、そして今回の分析の主題である免震用ダンパーなどを主力製品としている企業です。
企業として注力している技術は、振動などの制御ですので、免震技術はカヤバ工業の技術の中心から派生して、製品化につながっていると思われます。

カヤバ工業の出願傾向は、1-4の耐震・免震技術の技術分析のグラフから分類(4)と(10)に集中しています。

まず、分類(4)は、大和ハウス工業やフジクラにおいても取り上げた移動を許容する支承または類似の支持体の中で、「ころがりによるもの」という分類です。
字のごとく、球状の物体が皿状の受け部を転がるようにして揺れを減衰するような技術(球状と皿状に限定はされませんが。)に付与されます。
そして、分類(10)も、同じような地盤との間に免震支承手段を設けたものの中で、「ころがり支承によるもの」という分類です。

カヤバ工業の特徴としては、ダンパーなどの振動制御が技術的に強みと思っていたのですが、ここでは、どちらの分類もころがりに関するものです。
さて、具体的な技術内容はどのようになっているでしょうか?

それでは、分類(4)を筆頭のFIとして出願されている8件の中で登録特許になっている2件の内容を見てみたいと思います。

特許3594403(発明の名称:免震装置)

この発明で挙げられている課題は、「上下の円錐形の受け皿と上下受け皿の間にボールを有する免震装置を基礎と建築物の間の四隅に設置する場合、ボールの半径と上下受け皿の傾斜角度は、各免震装置ごとにボールが外れてしまわないように計算されて設計されているが、複数の免震装置を同一の基礎に設置する場合に制作誤差でボール半径と受け皿の傾斜が異なってしまって、正常に免震動作が得られない。」というものです。
つまり、従来から100%同一形状の免震装置は得られず、複数設置の場合、その誤差によって免震効果が弱まってしまうので、誤差を補う構成を取るようになっています。

この発明の図を見てみます。

まずは、従来の転がり免震装置です。

本発明では、この免震装置にハウジングと呼ばれるボールの転がりを許容しながらボールを密封する部材を設けてあります。

そして、基礎の四隅に設置される各免震装置は、押さえバンドを介して連結棒によって連結されています。

このような構成を取ることで、
隣接するボールハウジングが互いに押えバンドと連結部材によって連結されているために、各ボールハウジング内のボールは、単独で転動せず、各ボールが共に同一方向、同一量だけ転動することとなり、一つの下部円錐面受皿上におけるボールの位置と他の下部円錐面受皿上におけるボールの位置とが相互に異なることがなくなる。
更に、各免震装置のボールが個々に自由移動することがなく、各免震装置ごとのボールと下部円錐面受皿とのずれの程度が等しくなるため、免震動作の異常回避が可能になると共に、地震が止んだ後は、各ボールが正規の元の位置に自動復帰することとなる。
という、効果が生まれています。

特許3719810(発明の名称:ボール支承装置)

この発明の課題は、「免震装置のメンテナンス時に、下部の受け皿を交換する場合、取り外し可能な高さまで上部をジャッキアップするが、従来の場合には、かなりの高さまでジャッキアップしなければならず、作業に手間がかかり、負荷が大きいことから損傷していまうことがあった。」というものです。
このメンテナンス作業を軽減し、損傷させることがないようにするためにこの発明は考案されています。

この発明の免震装置に該当する従来技術は以下の図のようになっていました。

この発明では、従来と異なり、免震装置のボール部分の支持部にライナープレートと呼ばれる部材を設けてあります。
このライナープレートは、下部受け皿部の窪みとストッパリングと呼ばれるボールが受け皿から外れることを防ぐ部材との高さを合計した高さを有しています。

このライナープレートは、さらに、積層ゴムなどの弾性体によって形成すると微振動の吸収効果もあります。
下部の受け皿の交換作業を行う場合には、このライナープレート抜き取ることでジャッキアップを少し行えば交換作業が行えるようになるという効果が生まれています。

カヤバ工業の分類(4)に該当する登録特許の内容をまとめると、ころがり免震装置について少しだけ部材を追加することで、安全性を高めたり、交換作業を軽減するという考え方を持っています。
これらの出願は、1996年と1997年に行われており、阪神淡路大震災のあと浮き上がった「安全性の確保」や「メンテナンス容易性」といった課題に対応していると考えられます。

今回は、ここまでにします。
次回は、カヤバ工業の技術的特徴として分類(10)に該当する登録特許を見てみたいと思います。

最後までありがとうございました。
もう少し更新頻度を上げれるように頑張ります。
次回もよろしくお願いします。

にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ
にほんブログ村

よろしければぽちっとお願いします。
このリンクから知財関連のブログの検索も可能です。

カテゴリー: 特許, 特許分析

1-8 耐震・免震技術 主要出願人の技術的特徴④

前回までで、主要出願人の中で、オイレス工業、大和ハウス工業の技術的特徴を分析しました。

今回は、主要出願人中で20番目の出願件数であるフジクラの技術的特徴を見てみます。

フジクラは、通信関連のケーブルや機器、電子部品を主に扱う会社です。
1-3の主要出願人の年次出願件数を参照していただければわかりますが、耐震・免震技術からは撤退していると考えられます。
ですので、現在の製品情報にはすでに耐震・免震に関する製品はありませんが、当時の技術的特徴を見てみることでどのように耐震・免震の技術分野で製品を出そうとしたのかを見てみたいと思います。

フジクラの出願傾向は、1-4の耐震・免震技術の技術分析のグラフから分類(4)へ出願が集中しています。
分類(4)は、大和ハウス工業やカヤバ工業の出願も多くある分類で、免震技術における「ころがりによるもの」という分類です。
この分類が付加されるポピュラーな構成は、皿状の受け部と球状の物体によって構成され、球状の物体が転がることによって建物への振動を減衰する技術です。

この構成の技術についての改良発明が1995年の阪神淡路大震災以降に多く出願されています。

さて、フジクラの特許を見ていこうと思いますが、この分類に対して、主要出願人としてピックアップした30社の中では最も多い19件の特許を出願していますが、分類(4)が付与されているフジクラの出願は一件も登録になっていません。
つまり、フジクラの権利となった特許出願はなかったということです。

さらに、その内訳は大きく分けると3つのポイントに分かれています。

(1)転がり免震における部品削減によるコストセービング
(2)紐状の弾性体と転がり免震を併用し振動を減衰させる
(3)組立て可能な構成にすることで取り扱い、設置工事を容易にする

これらの中から(2)の紐状の弾性体を転がり免震に併用する技術を見てみます。

特開平09-242381

この発明の課題は、ゴムなどの弾性体と鋼板などの積層体のみで強度を高めようとして積層体を太くすると免震周期が短くなり、免震特性が低下してうこと、従来のバネ、ダンパ、転がり免震の三種類の免震装置を組み合わせた免震構造体では、構成が複雑巣すぎること、及び、耐風機能を備えた免震構造体の必要性が挙げられています。

それらの課題を解決するために、この発明では、単純な構成で安価で免震と耐風機能に優れた免震装置を出願しています。

構成は非常に単純で、転がり免震装置の周りを紐状の弾性体によって囲んだ状態です。
地震時には以下のような動きをします。

変位限定手段(チェーンなどにゴムなどの被覆材を被覆したもの)によって転がり免震が皿状の受け皿から外れることを予防しています。

もう1件紐状弾性体と転がり免震の併用をした出願がありますが、特に進歩性があるものではありませんでした。

フジクラは免震装置、特に転がり免震装置の改良発明によって耐震・免震技術分野に進出を考えましたが、転がり免震の分野では、有効な発明を世に出すことがなく撤退してしまったようです。
このように、出願件数の量だけを見るとシェアがあったように思われますが、実際の技術内容を紐解いてみると有効な特許を生み出すことなく撤退していった状況がわかります。
今回の分析から、数値による特許情報のみからでは、正確な判断は難しいということがわかるかと思います。

ちょっと拍子抜けな感じもしますが、今回はここまでにします。

最後までありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。

にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ
にほんブログ村

ぽちっとお願いします。

カテゴリー: 特許, 特許分析